高橋留美子さんといえば、かつての『
うる星やつら』『
めぞん一刻』などで
マンガ界・アニメ界に旋風を巻き起こした超人気漫画家さん。
現在は『
犬夜叉 
』でお子さんとその親御さんのハートまで
がっちり掴んでいるあたり、本当にスゴイ方ですよね。
『
人魚 
』シリーズでは、ちょっと不思議な世界やオカルト系好きの
マニアックなファンの心まで捉えてしまったし、
世代を問わずにマンガの面白さを伝えられる貴重な作家さんだと思います。
彼女の凄さはどこからくるのか?
色んな要因はあると思いますが、
私が一番強く感じているのは「人間観察の鋭さ」。
そしてそれを描くときの、対象との距離感のバランスの良さです。

『赤い花束』
傑作集「高橋留美子劇場」第3弾
高橋留美子・著
2005年8月・初版発行
小学館・発行
ビッグコミックオリジナルに掲載された短編作品をまとめた
この「高橋留美子劇場」は、様々な人々の日常を描くシリーズ。
そこに出てくる多くは、疲れたサラリーマンや孤軍奮闘する主婦たちです。
介護、リストラ、倒産、子供の不登校、社内の派閥、主婦の勢力争い、
単身赴任、住宅ローン、嫁姑、夫婦のすれ違い、親子の断絶、などなど。
市井の人々がひとつやふたつは直面しているであろう
大小とりまぜた色々な問題が
笑える程度から笑えない深刻なものまで
実に幅広く描かれています。
で、なぜ今この作品について話したくなったのかというと。
最近、今注目株の若手実力派作家との評価が高いマンガ家の作品を読み
気が滅入って落ち込む程の読後感の悪さを味わったからなのです。
作画力もあり、描写力もあり、構成力も抜群。
緻密に張った伏線も複雑にからまって、
この先どうなるのかしらという気にさせる展開。
でも、「若者のリアルな現実の痛み」と称して
反乱する性や、他人への無関心、いじめ、虐待、暴力、倒錯性の犯罪を
ただ描けばそれでいいのか、と。
簡単に「痛み」だ「傷」だと、見せびらかされただけじゃないか、と。
なんだかスゴくいやぁ~な気分になり。
マンガはやっぱり、エンターテイメントであってほしい。
もちろん、楽しいだけがその範疇ってわけではなく
そこには悲しいモノや痛ましいモノ、恐ろしいモノも含まれると思います。
でも一番大事なことは
そこに読者の心を何かしら何処かしらへと昇華させてくれる
カタルシスがあることではないでしょうか。
それは感動の涙かも知れないし、
空しさの溜め息かもしれないし、
ばかばかしい大笑いかもしれない。
それらがない作品は、どんなに上手でも「また読みたいなぁ」とは思わない。
高橋さんの作品は、そのテーマも様々ですが、
カタルシスの種類もバラエティにとんでいます。
なにげない一言だったり、些細なひとコマだったり、
脱力するようなボケだったり。
登場する人物に対してのめり込みすぎず、そのくせまなざしはあたたかい。
そんな心地の良い距離感で描かれた、
情けない人々のたくましさや切なさやどうしようもなさが
とても愛おしく感じられる作品ばかり。
そこには、必ずしもハッピーエンドや円満な解決はないのですが
生活ってそういうものだから...とさらりと言われているように思えます。
キュートな宇宙人を空に飛ばせて
伝説的なキャラクターを創り出したスゴさは言うまでもありませんが、
作品を読み終わったときに
読者の心まで空に飛ばしてくれる...
それが高橋先生の作品の最大の魅力だと思います。
スキップから宇宙旅行まで。
様々なレベルの「飛翔」を感じさせてくれるお話の数々。
この本は、何度も繰り返し読んでは笑い、涙している大好きな作品集です。
なかでも表題作の「赤い花束」は忘れられない作品のひとつ。
世の男性方。
大切な人の誕生日には花束を贈ってね☆

◇ 高橋留美子劇場 第1弾 『Pの悲劇』
「鉢の中」は秀逸。

◇ 高橋留美子劇場 第2弾 『専務の犬』
お気に入りは「君がいるだけで」。